そういう日常
虹村 凌

原発反対と言うデジタルな絶叫の3分の1は原子力で出来ています
3分の1は恐怖と愛で出来ています
残りの3分の1は何となくと言うノリで出来ています
みたいなだらしない冗談が口から溢れ出る
そういう日常

絶え間無く揺れ続けるアース、ウィンド、アンド、ニュークリアー
そろそろ東京も危ないと言いながら
社員食堂で全員がボソボソした飯を飲み込む
揺れる事が当たり前になって
画面に出続ける放射性物質の濃度が当たり前になる
そういう日常

日本の右半分が揺れて電車が止まって
電車で帰れなくなったみんなが歩いて帰る中を
ドンキホーテで自転車を買って帰ればいい
くらいの気持ちで最後の一口を飲み込む
質の悪い冗談みたいな詩的表現の昼食
そういう日常

眠くなる様な早さで回る世界をボタンを押して記録する
もう一度ボタンを押すとそいつは消えて行く
馬鹿馬鹿しいくらいにデジタルな感覚が染み付いている
会社の廊下は節電の為に落とされている
そういう日常

家の玄関の電球とトイレの電球は昨日切れたままで
面倒だから廊下の電気だけで足らせている
米びつは三日前から洗ってないままで
ひからびた米が張り付いている
そういう日常

未来に焦がした胸と
劣等感や焦燥感で煤けた背中に不安材料をぶら下げて
クソガキ共のゴミ箱みたいなセンター街を歩いて出勤する
そういう日常

早朝にホスト達に見送られて電車で帰るフリをして
地下道をぐるっと回って外に出てからタクシーで帰る女の真意はわからない
バカみたいなテンションで盛り上がっていた癖に
その上一人で急速に冷めていった癖に
人をナメ腐って遊んでやがるどっかのクソ野郎の真意もわからない
そういう日常

自分の事もなにひとつわかりゃしねぇ
そういう日常


自由詩 そういう日常 Copyright 虹村 凌 2011-04-19 17:24:50
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