斜に構えた隙間から
虹村 凌

生きる事、それが日々を告白する事ならば
僕は日々を生きている
そう考えていいのですか、先生
あなたの言葉が思い出せないのです
あなたの言葉がわからないのです
先生
あなたは裏切られた青年なのですか
先生
あなたは裏切られた青年達の代弁者なのですか

なんて言ってみるテストってやつで
半分は本当で半分は嘘なんだよって言って安心を与えるフリ
大人に褒められるような馬鹿にはなりたくなかったけれど
褒められなきゃお金が貰えないので馬鹿になります
テレビや新聞は僕らを不安にするだけだと思っていたけれど
僕もそういう所で働くようになりました
だからもうテレビの事を悪く言うのは止そうと思います
でも受信料は払いたくありません、とか言っていいですか
だって給料を還元してるみたいで馬鹿馬鹿しいじゃないですか
常時二万人が詰まった箱の中で笑いをこらえています

何だか皆が嫌がる原発の周りに
緑のハッパッパを植えて土を浄化すると言うピース
は既にその緑のハッパッパの名前のバンドがずっと前に出していた二本の指で
誰もわかっちゃいないし成長しちゃいないんだね
みたいに適当にまとめて話を切り上げるいつもの癖
変わって無いねと知ったような顔で言う
裏切られた青年とは世間に裏切られたのでは無く
まして残念な子供達に裏切られたのでもない
自分に裏切られただけだって事はとっくの昔に気付いている
裏切ったのは他ならない自分である事にも気付いている
誰もが裏切られた青年の代弁者だから
誰が何を言ってるかわからないけれどきっと言ってる事は全部同じで
その記号が少し違うってだけなんだろう

原子力発電所は安全じゃなかったけれど
それが聞こえて来るステレオはどの電力で動いてるんだろうか
みたいな下らない事を考えて今日も太陽は沈んで行きました
明日は裏切られた青年になりたくないです


自由詩 斜に構えた隙間から Copyright 虹村 凌 2011-04-09 00:23:51
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