素描
高梁サトル
スケッチ越しに美術室を見渡す
わたしは
わたしの目がどれくらい
セカイを正しく把握できているか知りたかった
ので、評価が必要でした
おそらくそれは何百枚目かのセカイ
イマジネーションは浮遊する
掴みとって引き摺り落として撫でれば消える
そんなもの、そんなもの、
(見たままを形にしてはいけないわ)
思春期まででした、そんな理屈、
どれをとっても似たような悲劇の
一員でありたい
ままの私が愛してあげる
うんと醜く
うんと美しく
わたしのスケッチブックでは何を描いても
(それで誰かが吐き気を催したって)
いいんだわ、思春期の純粋は
そのままでは生きていかれないほどの
脆さ、
が
イカロスのように飛べなくて
生身になったピノキオは炎に触れられない
絵本を描いた大人の事情を知った
子供たちが
あっちにもこっちにも
不安げな顔で立っている
大人になっても
(見たままを形にしてはいけないわ)
簡単に飲み込めないのは
簡単に吐き出せないからよ
それって、とてもさみしい
さみしいよと
下腹部の片側が鳴く
過ぎ去ってから言葉を紡ぐということは
そういうことです
と
何度も言いましたのに
一向に鳴きやまない
もうすでに
ト書きを読んでいるだけの
クレジットに名前も出ない
黒子に言葉はいらない
いくら役者の台詞を暗記していても
そういうところにいたいと思った
春
幕が開きません
前の物語が閉じていませんから
(見たままを形にしてはいけないわ)
適当な単語、思いつく限りの、
知っている言語の限りで空白を埋めた
それはあなた自身なのよ、と
わたしもわたしも信じすぎていたのね
すこし
自由詩
素描
Copyright
高梁サトル
2011-04-08 01:23:06
縦