a kind of ending
ガリアーノ

六つの日の出を数えたら
もうぼくたちは大人みたいな顔で微笑みを交わしていて
短針の行方なんて意外に呆気ないんだなって思う

アシンメトリーに垂らした茶色い髪のすきまから
こげ茶色の虹彩が覗いている
ぼくのほうはあまり向かずに、川辺の咲きかけの桜ばかり追っているように見えた

とりあえずのカフェで
ライチ紅茶とコーヒーで向き合って
とりとめのない体で、とりとめのない話をする

きみはどんなつもりで今ぼくの前に座っているのかな
俯きがちな視線からはよくわからない
ただぼくには、はにかんだような睫毛の軌跡が変わっていないことだけが確かだ

かつて、かつてあんなにもきみを想って
あんなにも溺れ、傷ついたことを、ぼくは忘れたわけじゃない
ただ、慈しんでいる。
きみを死にたいくらい求め、病むほどに思い詰め、息がとまるくらい苦しんだことを
あわい想いで、ただ慈しんでいるんだ。
変わらずに変わっていることやかなわない恋につらい思いをしていることも
ぼくにはほとんど遠い。
ぼくの内側では、ただうす甘いセンティメントが発酵して胸を締め付けているんだ。
なにも感じないわけじゃない。なにも思わないわけじゃない。
思いだしているだけなんだ。思い返しているだけなんだ。
あんなにもひとを好きななったことはない。
あんなにもひとを求めたことはない。
あんな風には、もう人に恋をできない。
そう思わしめるこもごもを、ただ、慈しんでいる。

ありふれた結末通り決していい終わりではなかったけれど
この切なさを、運んできてくれてありがとう。
恋が所詮身勝手なものに過ぎないのは多分恋愛の神様が身勝手だからだけど
気まぐれにこんな縁も結ぶことがあるんだね。
神様、恋愛の神様。
どうかどうか、そのままで。


自由詩 a kind of ending Copyright ガリアーノ 2011-04-04 19:32:59
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