探索者
ダーザイン

冷たい壁の手触りを確かめながら
第十三使徒
死都
ネクロポリス
暗い地下道をたどって行くと
薄汚れた鏡に
見知らぬ男の姿が映し出された
肩をすくめた黒マントの中に
密かに呼び出される空白者の顔
そのようにして
想いおこされたモノクロームの風光の中で
煙草の先に火を灯せば
一瞬浮かび上がる鮮烈な赤

百五十億光年彼方の雪野原には
遠ざかっていく者の影すらもなく
波打ち際で痴呆のように微笑んでいた
美しい娘の面影を求めれば
ぺれすとろいか
三頭立ての馬車が
音も無くおまえの上を通過する

青ざめた馬が
神に祈りつつ神殺しを成し遂げた夜
黒馬が 再び
世界を開きにやってくる
限りなく
光の速度に沿い
膨張していく新世界へと
メガストラクチャーを超えて
星々の階段

さようなら
懐かしい街
さようなら
愛しい女

ゴルバチョフの額には
失われた故郷の影が
美しい記念碑
原爆射爆場を舞う蝶のように
焼き付けられて
ボルガのほとりには
どこまでも鉄塔を連ねていく
丘また丘
風がびょうびょう吹いて
送電線が鞭のように世界を孕む
遠く地平の果てには
微かに海の匂いが漂って
一羽のカモメが舞い上がり
虹の橋を潜っていった

無の七色の光輪をまとい
鳥の飛影よ
再び
世界を接合せよ

鳥の飛影よ
再び
世界を接合せよ

神はいる
そこに
ここに
どこかに


自由詩 探索者 Copyright ダーザイン 2004-11-05 16:00:13
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