青梅街道ブルースドライブ
虹村 凌

津波がさらっていった親父の夢の事を考える
太平洋に浮かんでいる親父の夢の事を考える
親父は彼のブルースをドライブ出来るだろうか
僕は僕のブルースをドライブ出来ない
屈辱と憤怒と恐怖と焦燥と劣等とありふれた青春のブルースをドライブ出来ない
お前の細い身体と白く小さい乳房と桃色の乳首を思う
でたらめに脈打つ心臓を笑う
縮み上がった根性と怒張した薄汚い春情を笑う
お前のラヴアンドピースに埋もれる中指を笑う
不明瞭なインと不鮮明なアウトの境界線で行方不明になる
屈辱と恐怖に目を覚ます
乾燥して割れかけた唇を舐める
童貞を拗らせている三秒前の自分を殺したくなる様な色をした夕日に目を細める
誰かがオレンジジュースとミルクを混ぜている事を想像する
身体中の血液が冷えていく
膝が笑い出す
部屋中に反響する笑い声が聞こえる
ぬるいコカコーラで飲み込む
ここの世界はいつもこうだ
部屋を飛び出る
電気も暖房もつけたままで飛び出る
近くの街道をセンスの無いAT二輪車が走って行く
いつかお前を単車でさらいに行くよと呟く
すれ違う大学生が笑う
気の所為だと言い聞かせる
名前も知らない車の助手席にお前を見つける事をくり返す
気の所為だと言い聞かせる
煙草を不味く感じる
気の所為だと言い聞かせる
青梅街道を僕のブルースが走って行く
僕はまるでドライブ出来ずにグシャグシャになって眠る
そういう下らない話をもう一回聞いてくれ
そういう下らない話をもう一回聞かせてくれ


自由詩 青梅街道ブルースドライブ Copyright 虹村 凌 2011-03-19 21:01:04
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