CLUB「PEACE」
いとう


六本木芋洗坂にあるCLUB「PEACE」のサミーは
今年で33歳。もちろん黒人でカウンターで酒を作ってる
日常会話は平気だけど難しい日本語はわからない
フリをしていて
温厚でいつも笑いながら
Are you fine? を英語訛りの日本語で喋る
「ゲンキ?」

受付にいる「やすこさん」はかなりの美人で気さくでいつも笑顔で
「わたしもう27だよ」と笑いながら話すその笑顔は27歳なのに
安達祐美に似てたりする
最近髪を切ったがサミーの奥さんであるのは変わりない
PM7:00に仲良く出勤
いつも笑顔
月曜はお休み

30人も入ればいっぱいの小さな箱で
ブラックライトだらけで黒い服を着てると
かなりホコリが目立ってはずかしい
外人と日本人は半分半分で
安室のバックダンサーも来てて
ダンサー系の奴が多いけど
ナンパもOKだったり
入り口には写真がいっぱいで
北野たけしの生写真もあって
かなりミーハーな感じ
クラブなのにカードが使えるのも
かなりヘンな感じ

「レッドアイ」を頼むといつも残ったビールをサービスしてくれるサミー
「しばらく来れない」ともらすと「さみしいな」と言ってくれるやすこさん
店の中でナンパすると2人ともちょっと嫌な顔をする
この前日本人のガキがやすこさんにちょっかいかけて
サミーが切れて
右フックと左ローキックのコンビネーション
いい切れ味
そう言えば店のテレビではよく
マイクタイソンのビデオが流れてる
後でサミーに聞いたら「ボクシング好き」と答えてくれた
人を殴った手で酒を作りながら
やっぱりいつもの笑顔で

風の噂では
店が売りに出てるらしいけど全然買い手がつかないらしい
「らしい」だらけの噂がいっぱいで
サミーもやすこさんもそんなことは喋らないし俺も聞かない
聞けるわけない
店はそこにあるのだ
「いつ来てもそこにある」
それだけの理由で安心している
それがちょっと不安になって
そしていい歳こいてしょっちゅう足を運んで
それでも
と言うよりそれはあたりまえなのだけれど
2人ともちゃんと待っててくれる
ちゃんとそこにいてくれる
いつもの笑顔で
同じ場所で
そして当然
月曜日以外に




自由詩 CLUB「PEACE」 Copyright いとう 2011-03-05 09:08:19
notebook Home 戻る  過去 未来