すぎる傷口

時がすぎる
ひらり 舞い踊るように
いくつもの掌から巧みにのがれて
はやすぎる
スピードで通りすぎていく


再び口を開いて何事かを囁く
すぎさったはずの君の傷
ゆっくりと
おそすぎるぐらいに 
ゆっくりと
君を飲み込もうとしている


+


休み時間が終わったのは
遠い昔の話で
窓から見える教室には
必死で思い出を書き記す大人たちの姿
顔を上げない彼らの前で
黒板が黒く塗りつぶされていく

手探りで何かを探す机の中に
チョークの粉が舞う 


+


ごくり

喉の鳴る音がして目が覚めた

開いたまぶたの向こう
眩しさが
何も言わずに通りすぎる


言葉を口にしようとして
傷の上にできた かさぶたに気付く
指先で触れてみると
微かに叫び声が聞こえる
小さすぎる 
大きさで 
声が
聞こえる


+


時がすぎる
ひらり 舞い踊るように
いくつもの掌から巧みにのがれて
はやすぎる
スピードで通りすぎていく





自由詩 すぎる傷口 Copyright  2011-03-03 02:12:40
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