ヒト
itukamitaniji

ヒト

今日も朝目が覚めたら ちゃんと僕は僕だった
素敵な夢を見た気がするけど すっかり全部忘れた
僕に何の関係もない 悲しい事件をニュースが伝える
少し嫌な気分にはなったけど 寝ぼけた顔で見送った

望んでしまった終わりと 望まれつづけるはじまり
たくさんの生と死を 繰り返しながら時は進む
世界は過去を消して 未来を作って広がってく
それらは君という 存在によって繋がれてゆく


舞台の上のヒーローに 拍手を送って過ぎる日々
かたや君の戦いを 誰も褒めずむしろけなすばかり
疲れた体で辿る道 ふと見上げた空には
たくさんの星が瞬く だけど一つも名前を知らない

君よりずっと優しくて 君よりずっと強くて
君なんかよりも ずっとずっと素晴らしいヒトにさえ
君の代わりなんてさ 務まりなどしないんだ
君は君なんだ それは変えられないんだよ


古い友人からのメール 生まれきた新しい命の写真
素直に嬉しいと思う 他人事なのにこんなに
自分のことのように 温かくなる心が嬉しくて
まだまだ自分も 捨てたもんじゃないと思った

教わってないのに立ち上がり 届くはずない場所に
手を伸ばし転んで泣いて 抱きしめられた
誰かが生きることが 別の誰かの生きる意味に
互いに寄り添い合って その命が朽ちるまで

怒った後に謝って 泣きそうになっても堪えて
躓いて転んでも笑って 誰も居ないところで泣いた
教わってないのに泣いて 教わってないのに笑って
教わってないのに ちゃんと君は君なんだよ


自由詩 ヒト Copyright itukamitaniji 2011-03-02 20:05:27
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