いつのひも いつも
砂木


新しい雨合羽を買うという

同じ色で良いだろうという父に
母はピンクがいいと言った

野良着は 弟のお古でも いい母であった
農作業の汚れは しつこい
捨ててもいいような服を 着ては

農薬で負けた手
くたびれた体で
なりふりかまわず 働く

しかし 男の色は嫌だという
どうせ買うなら 女らしい色がいいという
結局 昼休み 父と一緒に買い物に行く

お昼ごはんの後片付けをしながら待っていると
嬉々として 父母が帰ってきた

手に入れた淡いピンクの雨合羽を着て 
いちいち 私に見せる
六十歳をすぎても 子供みたいだ
しかし 私は なんとなく 次の言葉を予感していた

ひとしきりはしゃいだ母が言う
やっぱり もったいないから 
明日から着よう


自由詩 いつのひも いつも Copyright 砂木 2004-11-02 01:37:35
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