魚の子
高梁サトル


どぶ川に棄てられた
あの子はどこへ行ったかな
しろい柔肌を
葉っぱみたいな深緑色にして
ぷかぷか浮いて流れていった

幼い兄妹がそれを指差して口づさむ

(ごらんごらんあれはさかなおねえちゃんはさかなになったの
(やがてうろこもはえるでしょ
(やがてむすうのおなじめとぐるぐるおよいであぶくのようにきえるのよ

子供はいつもやさしいうつつを歌う

工場跡から流れ出す
汚水もろ過され飲み水になる
なにがきれいだったか区別がつかない
寄る辺ないセカイに
浮き草のように身をゆだね
幼い兄妹は姉が
もとは人だったことを
いつまで覚えていられるだろうか

しろい柔肌を
葉っぱみたいな深緑色にして
ときどき銀色にひかっていた

あの子

海へ辿りついて揺れたかな
カモメに啄まれて揺れたかな


自由詩 魚の子 Copyright 高梁サトル 2011-02-02 03:59:40
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