ジャックオフベイビー
虹村 凌

いつか働くと思っていたあの日の少年は
絵描きや物書きに憧れたりしていた
フリーターなんて言葉は知らなかったし
世間と云うものから見下される職業がある事も知らなかった
だってどの本にもそんな事は書いてなかった

人生黒帯の奴等が笑ってやがる
名誉白人と呼ばれて喜んでた奴等と大差無ぇような
人生黒帯の奴等が嘲笑ってやがる
ニヤついたその飾りが載った首に
この白帯を巻き付けて
交通整理人員を見下した奴を片っ端から殺してやる

アイウォンチューベイビー
こんな俺だけど愛してくれるかい?
チョー好きなんだぜ
どうでも良い時があるくらいに愛してるんだ
何て云うと
アセスルファムKの「ソーカイカンのある甘味」
みたいな表現並みに馬鹿されていると
きっと怒るだろうけど
アイウォンチューベイビー
業務用の顔で笑って
業務用の声で喋るのは止してくれ
アイウォンチューベイビー
年金も貰えず生涯年収が一億を越える事も無い
それどころか時給1000円にも満たない僕だけど
愛してくれるかい?
ロクな人生設計もしていないけど
愛してくれるかい?
朝ご飯も晩ご飯もラー油ご飯だけど
愛してくれるかい?
こんなご時世にバイクに乗りたいんだけど
愛してくれるかい?

あの日の少年が撒いた種は立派な花にはなりませんでした
名前も無ぇ形も無ぇよくわかんねぇ雑草だけど
まだ枯れていない
らしいんだ

あー
外は雨だよ
春を告げる雨だよ
本当さ
もうすぐ僕は部屋でひとりぼっち
夏を告げる雨が降る頃に
僕は部屋でひとりぼっち

ベイビー恥ずかしいから
ふざけていうよ
アイウォンチューベイビー
愛してるぜ
だから雑草が光合成するみたいに
いっぱいセックスをしようよベイビー
そんな事
あの日の少年は考えもしなかっただろうけど


自由詩 ジャックオフベイビー Copyright 虹村 凌 2011-01-26 09:45:10
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