無差別
虹村 凌

人生って基本的に無差別級じゃないですか
ボクシング並みに階級を分けてくれとは言わないけど
せめて柔道くらいには分けて欲しいなぁと思うんです
人生の60kg超級とかそういう感じで
そうしたらきっとある程度は戦えるんです
俺まだ本気出して無ぇし
俺の実力こんなもんじゃ無ぇし
本当の俺はこんな奴じゃねぇし

ガードレールに座りながらコカコーラを飲み干して
そんな事を言ってみるが
それが基本的に全部嘘なのはわかっている
人生が無差別級ってのだけは事実で
人生が無差別級だから
こうやってのうのうと生きてられるんですよねって
笑いながら煙草を吸うけれど
誰も笑ってくれない
下らなく
だらしない冗談

誰かの分厚い人間の面の皮に
昔から閉じ込め続けてきたであろう自分の面影みたいなのを見る
出会った数とさよならを言う数のどちらが多かったのか
柔らかい乳房に抱かれて遠のく意識の中
羊を数えるみたいに数えてみたりする
途中で訳がわかんなくなって
こうなったらもうガンガン金稼いで札束でビンタしてから
もっと美味しいカレー作ってやる
とか言って眠りに落ちる

冷たいフローリングに膝を何度もぶつけて何度も目を覚ます
黒い影の背中はこちらに向けられたままで
その背中に殺したくなる様な夕日の赤を塗りたくってから
無差別級の人生について考えながら
豆腐にぶつかって死ぬ夢をみる為に再び目を閉じる
「刃渡り20世紀」とか言って喜んでいる奴等と
言っている事は大差無いから
豆腐にぶつかって死ぬ夢をみる為に再び目を閉じる


自由詩 無差別 Copyright 虹村 凌 2011-01-11 11:05:15
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