揺れる なまざし
るるりら



今日の太陽は 虹色
うろこ雲の間から のぞいた その光は 
魚のような潤いで太陽の位置周辺に
虹の同心円が見える
いきもののような 空だ

太陽は 天海を漂っては いない
ああやって 太陽は 空の一部で
私を見ている やさしい まなざし

初日の出は 一年に ひとつしか あがらないとは 限らない
あの年の日の出は あの人と私には ふたつあった

ふたりで暮らしていた おそろしく古いアパートは
煙突ストーブが利用されていた時代からの代物で
時計の隣には 時計と同じ大きさの
煙突穴が空いていて ふたりには 塞ぐ時間もなかった
おかげで 雪や雨も ときどき部屋に入った
エアコンもファンヒーターも あまり関係なくて
わたしたちは 夜毎に おたがいをあたためた

たいがいのことが まっいっか
で すんでゆく
壁に穴があいてるけど
ま いいっか
寝る暇もないほど 働いているけれど
ま いっか


あの部屋の日の出は ふたつあった
煙突穴の中に 光が入ると 壁に まさしく太陽が昇るかのように
丸い光が投影される ほぼ煙突穴サイズの太陽が上る

本物の初日の出は 壁の向こうの穴の向いた方角にあるはず
ま いっか
偽者の太陽に ふたりは  布団の中で手を合わせた


ふたりは あたためながら
ふたりがふたりであることは幻想で
ほんとうは たしかに ひとりだと感じた

ほんとうの太陽は 寒風の中だろうけど
ふたりの布団の外も 外気と違いがなかった
ふたりで 壁に映った太陽を 拝んだ


今日は
あの日の太陽と
目が合った
今日は虹色だ
魚の目みたいな顔した 太陽だ

太陽が虹色なまま 

ゆれた
ウインクだ

さては
あのときの
太陽だな

恥ずかしい


自由詩 揺れる なまざし Copyright るるりら 2010-12-31 19:19:46
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