冬の日の即興
橘あまね
道端に 雪をかぶって
うち捨てられた人形は
さぞや寒かろ さみしかろ
あの日も
おなじくかがやいて
うなる風に 耳をすませたら
ぼくがぼくであるための
拍動の 確からしさが
ひどくあいまいになったので
にぎり返そうとした掌は
風にはこばれた後だった
あたたかい場所をさがして
歩いていくおさなごの足は
やがて風に乗る
東から西へ
雲の群れとすれちがって
振り払って
明るいとおぼしき方角へ
自由詩
冬の日の即興
Copyright
橘あまね
2010-12-31 10:54:56