めくるめくる
あぐり






冬枯れの薊に右目かるく触れ 「さ」からはじまる手紙を書こう





忘れないことでまもった初恋があなたを毎日、毎日千切る


やわらかい雨にせかいを浸したらサティとわたし、ミルフィーユになる


(こめかみがふるえてなにか言いかけて わたしはなんにも聞きたくなくて)


そんなものどこにもないから今日はもうやまない雨だけ求めていたい






ひとひらの雪に小指の影映すみたいにあなたを抱きしめている





落日の速さであなたを泳ぐ冬 たちつくしてる鼻がいたいよ


やらかさの代償みたいに伸びていく冬薔薇 あなたの咽を噛みたい





春先の床の高さで抱かれれば額にぶつかる未来は「田園」


かろやかにあなたをわらう 春風はやさしくせかいをふきとばしてく


眼に映るぜんぶをむやみにつぶやけばせかいに恋するアメリの気分


バジルとか檸檬水とかそういったあなたのプラスαになりたい


透明な朝をかぶってわたしたち、春にディープなキスは出来ない






血を流すことは平気。(さみしいを言えたら生きていけたよ、Dr.)






くるぶしのうちがわばかりすりむいて ひきずる笑顔をあなたはたべた


身勝手で眩しいものの例として、小麦粉みたいになりたいわたし


焼きすぎたパンのささくれ、溶けるバター わたしにからまるLove is over


マスカットミント噛むこと ひっそりと今日を丸めて捨てるということ







(あの夏の瞳でつぶやく嘘になら800年後も騙されたげる)







あの靴の音が聞こえて振り向いたわたし残して転がる枯葉


隠し持つこころも軽い葉 枝先にしがみついてる重さが揺れる


ぼくをぶつきみのてのひら ひらひらと舞い散る言葉もぜんぶ消そうか


秋空に降りゆくものの名を問えば少し温度を下げる頬骨






こんなにも貧しいからだが愛される遠い遠いせかいで光る






ともだちがともだちじゃなくなるときの瞳の縁の綺麗な寒さ


レノンには言えないことがありすぎて、くるぶしばかりこする明け方


明日には摂氏零度になる空で、ひきつる瞼を押さえて泳ぐ


腰骨の少し内側おさえれば落ちる椿の声がきこえる





はつしもがゆめのうみにもおりたから、みぎてとてぶくろつないでねむる




今そこに覆い被さる冬空へ溶けずはためくマフラーの赤









ふと、たまに、ふたりのあいだをさよならがしあわせそうにとおりすぎます









かさぶたをそこはかとなくめくる気分 あしたはあした わたしのあした









短歌 めくるめくる Copyright あぐり 2010-12-24 00:50:20縦
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