たまご
石畑由紀子


酔いにまかせて産み落とされたたまごたちが
そこかしこでひしゃげて身をよじっている
主人の子宮に戻れるわけもない
ばつの悪さと気恥ずかしさと
タクシーの排気ガスで満ちる街に陽が昇るころ
ぬらぬらと溶けだしたたまごたちは
誰にも拾われることなく
清掃車の噴射水で吐瀉物と一緒に下水口へ押し流されてゆく
その中には
主人が人知れずあたため続けていた
いじらしい本当も隠されていた





自由詩 たまご Copyright 石畑由紀子 2004-10-27 21:00:56
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