テディベアになりたい
光井 新

 テディベアになりたい。そこにいるだけで、なんの役にも立たないような、そういうものに、なりたいと思う。
 どんな事が起きても、動じず、無表情で、ぼんやりと、花柄の壁紙を眺めていたい。そんな風に、何年も、何十年も、変わりゆく街を背に、窓辺にただ座って過ごしたい。
 時には洗濯バサミで吊るされ、いつかはきっとゴミ箱に捨てられてしまう。それでも、大切な友達が泣いている夜には、優しい言葉をかけてあげたくて、人間になりたいと願わずにはいられない、月明かりの下のテディベアになりたい。


散文(批評随筆小説等) テディベアになりたい Copyright 光井 新 2010-12-13 17:19:25
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