師走
光井 新

見るからにヤバそうなのが キた そんなのは 見なくてもわかる プンプン臭うぜ ピンヒールの か細い 金網を張った あれは 床というべきか 屋根とでもいうべきか 足音からして 宙に響く 長い髪が 歯車の回転する 音を立てて ピストンが 上下する 横を通り過ぎて行く
鏡を見た時には 表情を 作っている ガラスなんかに 映る自分を 認識した時には既に 微笑んでいる 見られている その目の奥を見ている または
見ている その目の奥を見られている そして笑っている
冷たく 青い スポーツカーが 静かに 溶けてゆく コンクリートに 走り出した スピードで 引き金を引く 想像をして 楽しんだ ピストルの反動
黄色い テープが張り巡らされた 赤提灯の 入り口に 三つ 四つ 積まれていた ビールケースが崩れていた 明け方 
愛をください 愛をください 濡れたアスファルトみたいな声で ヘタクソなカラオケが聞こえる その曲を知らない


自由詩 師走 Copyright 光井 新 2010-12-12 03:35:24
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