雨に捨て猫
itukamitaniji

雨に捨て猫

我輩は捨て猫である 段ボール箱を住み処とし
人の流れを ここから見ている
名前はもう無い 昔はあったんだけど
ミケだかタマだか もっと凝った名前だったか

排気ガスやらで 汚れてしまった毛並みを
舐めてみたって 苦いだけ

雨が降って 染み付いた汚れを洗うけど
濡れて駄目になった 段ボールの家を抜け出す
踏み出した アスファルトの道路は固くて
肉球が痛むけど 俯いて歩いた


少し昔のこと思い出す 可愛がってくれた彼女は
忙しい日々に追われ やがて気持ちは離れてった
僕だって愛想なくて 慣れ合いは好きじゃないけど
今になって あの生活の心地良さを思い知った

僕を捨てる時に 彼女は涙を流しながら
ごめんなさいと 呟いて去っていった

悲しくなんかないよ 物事にはきっと全て理由があって
それが原因で うまくいかなくなっただけ
それで何もかも恨んだり 絶望する必要も無い
今度はもっと うまくやる方法を探すことが大事なんだ


いつか雨も上がり 毛並みもすっかり乾いたら
きっと 新しい自分になるよ


自由詩 雨に捨て猫 Copyright itukamitaniji 2010-11-27 19:58:02
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