恋歌
ガリアーノ

指先を絡めて紡ぐ恋歌に
灰雲からしろい雫
水は無いはずの月から
ぴしゃりぴしゃりと
まるで空さえも味方につけたかのように

「恐れるな。藍闇の向こうに広がっているのは光原だ。」

本当は知っていたとして
漆黒に手を伸ばすことも出来ず
繋がりゆくあまい行方にこがれ
昴をも敵に回す不遜さの装いで
十指の夢の狭間に足を滑らした振りをして


藍の向こうの黒
藍の向こうの黒
知っている
知っているんだ

藍の向こうの闇
闇のまにまに犇めく
鬼の胃袋を模した焔

囚われるのは、たやすい。

ゆらめきが両手を塞ぐ
熱波が光の黒を遠ざけ消し去ろうとする

懸命に、懸命に紡ぐんだ
両の手のひらからこぼれ落ちようと
その破片が深海の色の炎をあげようとも
やがては華開き光を結ぶ
やがては華乱れ光を放つ


時は移ろい神さえいない月となり
水のように流れ落ちた恋歌は
砂のようにただ連なりを作って押し黙る
映り込むのは、黒光か海焔か
神さえ知らず神はおらず
ひとつなぎの恋歌はただ煌めいている


自由詩 恋歌 Copyright ガリアーノ 2010-10-20 02:23:30
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