海月
itukamitaniji

海月

あやふやなままで 僕は存在している
真っ白に透けて どこからが僕なのか分かりにくいけど
ほんの少しずつ 記憶は捨てていかなくちゃ
そうしないと 完全に沈んでしまうから

僕は海月 記憶の淵

深海には 死んでしまった記憶が眠る
潜り過ぎちゃ駄目だよ 起こしてしまうから
沈むか沈まないか そんなぎりぎりの弱い浮力で
静かに漂う 明るい暗闇の中を


また君の夢か ここんところ毎夜さ
僕はもう 君の笑顔さえ忘れたはずなのに
長い時をかけ 遠く泳いできたと思ってた
だけど僕は止まっていて 波に運ばれたに過ぎなかった

僕は海月 君は月

晴れた夜には 君が降りて来てくれる
真っ白な光が 僕の形を戻してゆくよ
僕の方こそが 君まで浮いたんじゃないかって
そう見紛う程の 綺麗に晴れた夜だった

それは幻で 僕には見えないはずの夢だった
浸りすぎちゃ駄目だよ 戻れなくなるから
沈むか沈まないか そんなぎりぎりの弱い浮力で
静かに漂う 明るい暗闇の中を



※海月=クラゲ。


自由詩 海月 Copyright itukamitaniji 2010-10-19 07:24:56
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