燃えるごみの日
salco

未明からカラス達が鳴き騒ぐ
燃えるごみの日
電力を享楽する都会 まして貪欲な鳥達に
夜盲は無縁なのだろう
ゥアー ゥアー
アー アー
グオッグオッ オッオッ
アガ アガ グァー
多彩な言葉で鳴き交す目聡い寄食者達の狩場で
防護ネットをたくし込まぬずさん
そんな人間が1人でもいれば
忽ちめくり上げられ散乱する
皮裏まで匙の入ったメロン
しゃぶり回した鶏の手羽
腐った鮮魚の頭
溶けた野菜屑
茶殻と卵殻
グオッグオッ
グワッグワッ
冷凍食品とスナック菓子の袋
丸めたレシートや裂いた請求書
案内状 招待状 終わった手紙
ポリプロピレンやポリスチレン・トレー
忍ばせた佃煮の空き瓶 味噌煮の空き缶
ペットシーツにペットの糞
夥しい吸殻 夥しいティッシュペーパー
折り込みチラシ あられもないマガジン
出血多量のナプキン コンドームの死屍累々
無記名の恥が悪臭を放ち
風に転がされタイヤに弾き飛ばされて
ヘンゼルとグレーテルの行く道を敷衍する
それらはもはや残飯漁りが見向きもしない、
消費と吐き気のヴァリエーション
ゥアー
ゥアー
アー
アー
舌の肥えた渉猟者達は
次なる饗宴へ



8時半過ぎ
ゴミ収集車が回って来る
10メートル刻みで停まっては
大口の頼もしい唸りを寸時、轟かす
走り去るごと先々の道は清められ
居住まいを町はこうして正して行く


未明からカラス達は鳴き騒ぐ
何の日でもない
ゥアー ゥアー 
アー アー
グオッグオッ オッオッ
アガ アガ グァー
そこに飢餓の響きはない
飛ぶ昆虫 跳ねる昆虫 這う昆虫
のたくる幼虫
地上最多の種類と生息数を誇る生餌
点在する小さな畑や庭先のトマトや胡瓜
畝に転がる様々な落果 葉桜の結実
塀際で膨らんで行くたわわの枇杷
それらを空中から目聡く見つけ
あるいは仲間の会話で聞き知るだろう
張り巡らされた電線や
さ緑を振り鳴らす樹々の梢
色とりどりに照り映える屋根屋根を足掛かりに
滑空し
急降下して攫いに来る
ゥアー
ゥアー
道端の菓子や公園の食べこぼし
金網の屑籠に溢れ返るコンビニ弁当の飯粒や麺
ハンバーガーの包みにへばりついた
マヨネーズやケチャップ
ヨーグルトやプリンのカップ
アー
アー
犬小屋横の傷んだドッグフード
植込の下に食べ残された無宿者への喜捨
土鳩や雀から奪う糧沫
また赤蟻と分け合う雀の トカゲの 蛙の
クマネズミの死骸
撥ね飛ばされアスファルトにこびりついた猫の
ぶちまけられた臓物
ごみの日


自由詩 燃えるごみの日 Copyright salco 2010-10-17 07:11:31縦
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