朝の乳首
はだいろ


千代田線で
背の低い女が
目の前に立ち
ぼくは痴漢と間違われないように
満員電車ではいつも
腕を組むか
両手でつり革をつかむか
本を読むことにしている


暑すぎる夏の朝だった
薄着の女は
携帯をいじっていたが
背の高いぼくが
はからずも眼を落とすと
どうしても
Bカップのブラの大きさが合わぬのか
うすい乳首がのぞいているのを
気づかずにいるのはむずかしい


地下鉄への駅を降りるとき
たくさんの女子高生とすれちがう
東京の0年代の女子高生
キャバ嬢みたいなの
デリ嬢みたいなの
あっとうてきに美しい子
なんとも素朴な子
いろんな子がいる
みんなといちいち付き合いたいと思う。


もうとっくに女子高生ではない
薄着の女は
中途半端な若さで
中途半端なお化粧で
中途半端な美しさで
きっと
中途半端なじぶんの
中途半端な生き方を持て余しているのだろう


朝の乳首は
他人のぼくを見つめるように
すこしだけ上向きに色づいていた









自由詩 朝の乳首 Copyright はだいろ 2010-10-15 21:22:46
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