【くちなしの実】
夏のわたしの 誕生日、その朝 発した言葉は
おはようでも こんにちわでもなく
「くちなし」 だった
喋れなくなるほどに
薫る高貴な色彩の白
雫を讃える 光沢の葉
くちなしという名前の花
秋のあなたの 誕生日、その夕暮れ 一日の終わりの言葉は
おめでとうでも おやすみでもなかった
雑踏に揉まれましたか
どんな思いですごしましたか
聞きたいことはたくさんあるけど
なにも聞かずにお菓子を作ります
わたしが うまれたとき
白いくちなしが咲いていたそうよ
あなたが うまれた日は
栗のお菓子をつくりましょうね
すこしだけ くちなしの実を入れると
わきあがるのは
喜びを讃える 黄金色
あなたが笑えば 世界が笑いだす