朱色の記憶
砂木
日陰に咲く木蓮の種子
春に咲かせた花は過ぎて
朱色の珠がもたれている
白い月が 青い空にかすむ頃
がさがさと荒く 深緑の大きな葉に
一羽の鴉が忍ぶ
落とされた さやの朝露ごと
くちばしに 喉に 朱色が触れる
やがて 何事もなかったかのように
電線の向こうへ 鴉は飛び去った
土の上に散らかった葉が 風に舞う
自由詩
朱色の記憶
Copyright
砂木
2010-10-11 20:53:03