名前
たもつ

 
 
バッタの匂い、そして夕暮れ
船籍を持たない貨物船が
狭小な港に停泊している
たくさんの名前を積んで

名前に奪われた名前がある
名前を奪った名前がある
誰も知らないところでひっそりと
捨てられ、生まれてくる名前がある

区別するための記号でしかないのに
意味や願いなどがある
それはとても恥ずかしくて、尊い

私が私の名前を呼ぶ
私が坂道を駆け下りていく
私ひとりを置いてけぼりにして
 
 


自由詩 名前 Copyright たもつ 2010-09-28 09:01:14縦
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