夏の温度
塩崎みあき

日差しに焼けた肌が
深夜の電光に溶けている

胡瓜は
フルーツだろうか
という議論を
今し方
あの白い壁の向こうに聞いた
そうだ
もう
夕焼けのときめきが
透明な鴇色のレイヤーになる
時間なのだ

あの年の
海ではしゃいでいた
ポリプロピレン製の女たち
そんなものにさえ
少しの憂いをこめて
上空を見れば
虫の羽音のみさみしく

シノニム
電光掲示板
シグナル
闇と点滅の十字路

ソーラーパネルの中に居座る
サウナの中の常夏が
特別暑いわけではないことに
誰もが承知している
立体的な道路こそ
本当のロマンチストだ

あの年の
焦げた肌の冷たい目
と手と海水と空
と砂と月と泡と
干上がってとうとう
枯れてしまった
僅かばかりの
ポタジェの野菜たち

夜になると
やけに白くなってゆく
書物のどうでもいい
ページをめくって
その摩擦だけが少し夏だった


自由詩 夏の温度 Copyright 塩崎みあき 2010-09-26 15:29:53縦
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