銀のナイフ
こめ

未来から届いた手紙には

これ以上ないくらいの幸せが

書かれていた

けれど僕はそれは信じなかった

いや信じられなかった

こんなにも幸せに僕がなるはずがないと

手紙をバラバラにひき千切って

風に乗せて未来へと返した

一人分の日溜まりを争う人を見つめ

僕は月溜まりの下でうつ向いて

蟻の巣を足で壊していた

こんなにも切なく悲しく苦しくなるなら

いっそ会わなければよかったよ

そうすればこんな気持に押し潰されることはないのに

なぜ知り合ったなぜ恋に堕ちた

あの時あの場所あの時間

それは神の悪戯だったのか

なら僕は貴方を決して許さない

いつか貴方の心臓を銀のナイフで突き刺すだろう

探してもいない

いつも笑って向かい側に座っていた貴方がもういない

だから今日も探しにいく

喧騒に溢れる街に貴方の面影だけを頼りに

薄暗く気味の悪い裏路地を

野良犬と共にはいかいした



自由詩 銀のナイフ Copyright こめ 2010-09-21 15:16:01
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