眠りの季節
真山義一郎

風がずいぶん涼しくなってきました
青い空に
白い月が出ていて
どうして、涙が流れそうになってしまったのでしょう
よその家から漂ってくるカレーの匂い
僕は心の中の
小さな茶の間を思い浮かべて
もう二度とそこへは戻れないことを
思い知るのでした

海の水が奇跡的に揺れていました
空と海の境がわからないほど
原色の青が目に眩しくて
女の子たちが赤、青、黄色の水着ではしゃいでいて
ああ、故郷に帰ってきたと思った途端に
それが夢だったのだと気づきました

夏が夢だとするのなら
秋は目覚めの季節なのでしょうか
だから、こんなにも
心が切ないのでしょうか
でも、きっと、また冬が訪れて
僕は眠ってしまうでしょう
毛布を手で触れて
その感触を楽しみながら
冬は冬の夢を見たいと思います
ポプラ並木の冬景色
そんなドラマの一シーンのようなところで
僕は待っています

まどろみながら
深く
冷たい息を吸いながら


自由詩 眠りの季節 Copyright 真山義一郎 2010-09-18 03:26:30縦
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