バースディソング
涙(ルイ)

どうしようもないことばかり口にしてしまう
虫の声さえ聞こえない熱帯夜
最終電車もとっくに過ぎていってしまったのに
私は今夜も寝付けずに
見えない星を探しながら考えてしまう
私はこの世に生まれてきて本当によかったのか
本当に 必要とされて生まれてきたのかって



     保育園の最後のお遊戯会のその朝
     あいつはささいなことで機嫌が悪くなって
     かあさんが作ったお弁当を全部床にたたきつけた
     ご飯を食べてるとき 態度が悪いといって
     醤油の瓶を投げつけられた
     扁桃腺の手術で入院していたときには
     飲み屋で酒飲んで大暴れしてたって
     術後の痛みの中で聞かされた
     運動会のときも遠足のときも
     なにかある朝は決まって暴れるから
     大していい思い出もない


     中学2年のとき 両親が離婚した
     やっと離婚してくれた
     そのとき母が放った言葉はこうだ
     「あんたはあの家に残って」
     私はこの人たちにとってなんだったのだろう


どれだけ悔しかったのかも
どれだけ許せなかったのかも
本当は誰かにすがって泣きたかったけど
強がりな私はいつだってくちびるかみしめて
涙なんか流れないように
いつだって見えない星を探すふりをしていた
漆黒の暗闇だけが何も云わず
ただじっと 私を見つめてくれていた


先生 どうか教えてください
私の居場所はここでいいのでしょうか
本当に私はここにいていいのでしょうか
綺麗事なんてもう云いたくないし 聞きたくもないのです
生まれてきてよかったと
そう思ってもいいのですよね
罰は当たらないのですよね

幸福になることに
もう 臆病になる必要はないのですよね
大手を振って 生きてもかまわないのですよね

生きることにいちいち確認が必要だなんて
笑わないでください



9月27日 もうすぐ私の誕生日です
身内の誰も私の誕生を喜んじゃくれなかったけど
自分投げ出さずに34まで生きてこれたじゃない
だからさ だから泣き声のまんまでも
歌ってあげようよ
はっぴぃばーすでぃ とぅ みぃ と



昔を思い出すたびに傷口が開いてしまうのならば
こう云ってあげたらいい
つらかったね 苦しかったね
でもがんばってきたよ
がんばってきたじゃないか


もうそろそろ 過去から自分を解き放してあげようよ


誰かが私を必要としてくれるのかなんて考えるより
誰かに必要としてもらえる人間に
誰かの心の傷口に そっと寄り添えるような人間に
かつての友達がそうしてくれたように
かつてのあの人が そうしてくれたように


今を生きて 今を憂い
今を笑い 今に泣く


私が私を必要とさえしていれば
流した血も涙も いつかは浄化するはずだから



大丈夫
大丈夫
大丈夫



もう一度 大きな声で


はっぴぃばーすでぃ とぅ みぃ


自由詩 バースディソング Copyright 涙(ルイ) 2010-09-17 21:21:57
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