ある男の、ベッドに
番田 

真冬の風の中で濁った息を吐きながら
夜のニューヨークのメインストリートを歩いた 
私は息を吐いては その向こうに
車の窓から 見つめている
私は今日も ブロンクス通りに向かうのだと思う
夜の五番街の大通りを
あてもなく ぼんやりと さまよい歩いて
今日もいるべき場所に 道ばたを見つめていたのかもしれない
パソコンを ぼんやり 小脇にたずさえながら


ボートデッキでハンバーガーを食べる人を見て
新しくできたダウンタウンの画廊の前を通り過ぎる


新鋭作家の作品というと あまり売れないものだが
最近は市場の動向も 変わってきたという



1ドルもしなかったコーラをスーパーで手に入れて
見えない星を路地裏で数えた
エサを猫にやって アパートのドアを今日も押した
これから世界のどこに行くというわけでもなかったけれど


そこに行ける場所など確かにあるのだろうかと
今日も私は緑の布団に横になる
そこに行ける場所など確かにあるのだろうかと
そこに誰かは夢を見るのかもしれなかった


そこに行ける場所など確かにあるのだろうかと
今日にさようならとつぶやいて



自由詩 ある男の、ベッドに Copyright 番田  2010-09-17 19:19:56縦
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