パレット
Akari Chika

太陽は
雲に隠されてしまうけど
光だけ
火花のように洩れている

絵筆を持った少女が
街を見下ろして言う

「そのビル一つ塗り替えられないくせに
 人の心一つ塗り替えられないくせに
 そのパレットは何の為にあるの?」

本当は
ひよこ色の瞳や
グリンピース色の自転車にあこがれた
でも そんなの
誰かが
「おかしい」って言うものね

「それならば」
絵筆を持った少女が笑う

ぶちまけてしまえ
あなたのカラー そのパレットを
ひっくり返せ
すべてを塗り替えて
新しい色を見せてよ

雨の色も
影の色も
好きなように
塗り替えてしまえ

あなたは あなたの色を認める為に生まれてきたのよ

灯台は
闇に紛れてしまうけど
光だけ
海の奥まで照らしている

絵筆を持った少女が
人々に向けて言う

「その仮面一つ顔から外せないくせに
 そのカバン一つ置いてこられないくせに
 自分以外を愛そうとしてるの?」

虫眼鏡や
顕微鏡で
人の心を覗こうとしていた
答えが見えれば
「嫌い」って
思われることもないものね

「もどかしい」
絵筆を持った少女が笑う

ぶちまけてしまえ
あなたのカラー コンプレックスを
ひっくり返せ
すべてを塗り替えて
あなたらしい色を見せてよ

街の色も
人の顔も
気の済むまで
塗り替えてしまえ

あなたが 誰かの色を認めて生きていきたいのなら
まずは
あなた自身で
あなたの色を認めてあげて

一人に一つ
パレットを配り終えて
「仕事はおしまい」
そう思っていた少女は
絵筆を置いて笑う

ねえ だから
優しい黒や
意地悪な白が
あったって良いのよ

〔それがあなたのパレットならね〕







自由詩 パレット Copyright Akari Chika 2010-09-11 14:07:58縦
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