括られた九月
小池房枝

ラストノート彼女の香りと音楽とルーズリーフの最後の一枚

引き出しの記憶の奥に「ユトリロの白」とだけ画家の絵も知らないのに

猫よ猫、抱き上げた目の奥行きよ、あんた脳みそあるんかい?ニャー

カニの名はスベスベマンジュウ何故それを?清原なつのアンタ何者?

触るなと誰も私に触るなと私が私に深いところで


タンデムで「アーユー良かとっ」「良かっ」発進
「あんたば好いとぉ」「聞こえないよ〜」
 
美しさを持たぬ言語があるだろうか。カタコトであれヒトコトであれ

秋に飼う小さな二匹のカニの名にシロカニペそしてコンカニペなどと
 
押入れの布団の上で猫さまは牢名主さま一枚おくれな
 
涼しさは替えたばかりの蛍光灯 詩人の留守にひとり見る月

 
子供たちドングリそんなに集めてさ一年分もどうするつもりさ
 
ムルムルは佃煮よりも動いてる彼らとぴよんこぴよんこしたいな

リービッヒの最小律は君にとって外部ではなく君自身だろ

ただびとの一生に見る二回分はもはや見たりとカエルの畦道

通りゃんせお通りよここは遠い日の思い出どんぐりぴしぱし降る道


髪の毛が触手だったらいいのにな百円ショップ薔薇の髪飾り

夏を終えたわわに実った果樹たちを狩りとれ西の善き魔女たちよ

夜と名づけられたなら夜になれるかな胸にひとを抱いて深く静まる

体中どこにあててもぴったりとフィットするひとの手のひらの不思議
 
やわらかなやさしい触手をうたいたい。自分をふくめて誰宛でもなく
 

「軍隊」は「国民」を決して守らない「国体」あるいは「命令」を守る

国民こそ陸海空の自衛官や警官さんを守らなければ

「あっけない」に見えちゃってました
「あっいけない」
いずれにしてもとりかえせない

前髪を1ミリ切りすぎちゃったのとあえかな若妻家出決行

ぐっすりと寝てたら夢に起こされた朝帰り猫が外で待ってた

駐車場ノラ猫ニャニャニャと小走りで何をしてるの?
でっかいカマキリ!


短歌 括られた九月 Copyright 小池房枝 2010-09-09 20:20:38
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