バーボンに幸せを
吉岡ペペロ
駅をすこし上ったところに
ウィスキーをやれる店がある
バーボンにしようか
スコッチにしようか
いつもすこしだけ悩む
ロックと炭酸水のボトル
それにナッツが運ばれてくる
あなたにこんど会ったら、
会ったら?
あたしがたいせつじゃないことを目の当たりにする、
たいせつ?
妊娠したら、消しにくるでしょ、
戦争みたいな会話だな、
消しにくるのは、ひかり?それとも本質?
バーボンをなめながら思い出す
世界はかりそめのひかりで出来ている
たとえば月を
ひかりのことだと勘違いしている
月の本質はひかりではない
おんなが妊娠したときのことを思い出す
あのころの心の扉を
一枚一枚剥ぐようにバーボンをなめる
ひかり?
本質?
ひかり?
本質?
ひかり?
そうやってさいごには家族をとるんだ、
バーボンに幸せを祈りたくなった
幸せなんてものはひかりだ
ひかりは本質を眩ませているだけだ
だけど今夜は
バーボンに幸せを祈りたくなった