口笛についての
たりぽん(大理 奔)


口笛についての十箇条
という本を手に取る
森は今日も図書館だ
また迷い込んでしまう
薬研堀の夜景は夜飛ぶ鳥たち、の巣
漏れ出したようなかすかな星空よりも
営みの湿気をまとった森の夜光虫たち
頁をめくりながら獣道を踏みしめて
歩き煙草の煙にむせる

もう生きているかどうかの自信がないので
とりあえず一番綺麗だと思った花に
少し水を注いでみると
今日が明日にかわるのを
感じることができるかも知れない
それでからだを取り戻せるなら
そんなに嬉しいことはない

また頁をめくる
図書館がいつの間にか
場末の万華鏡になってしまったので
ぐるぐると
本を頭の上で回してみる
今日の口笛は六箇条しか守れなかったけど
どうだろう
漏れ出したようながなり声よりも
夜飛ぶ鳥たちの
さえずりのように聞こえないだろうか

そんなものだろ
そんなものだろ






自由詩 口笛についての Copyright たりぽん(大理 奔) 2010-09-02 22:27:44縦
notebook Home 戻る  過去 未来