mean
コーリャ


mean meanと蝉がぼくを詰っている
いじわるなぼくは
アスファルトにおちているつよい水性の日差しをひろってたべる
夏というのは架空とおもう
ふとてのひらをすかしてみると
うすい水かきが指のあいだに張っている
北極までいこうぜ
泳いで

大人のくせにいつも半ズボンだった彼は
あるとき虫取り網と虫かごをかついで
ハピネスをつかまえにいってくるといって
どこかに消えた
かれは死ぬように笑っていた
しかもちょっと透けていた
青というの色の真実は熱量をはかる尺度だった
ほんとうの夏だった
こんな暑さにはそれを思い出して
あのとき彼が餞別だぜといってぼくにさしだした
麦わら帽子をもらっておけばよかった
と後悔したりもする

丘の天辺にある風車は星を発電している
たとえばみんなが死んだ夜の
せかいのおわりと簡単にすまされる
残骸がそのまま墓石になって
いつまでもいつまでも
光るビルディング
あるいは
たしかに生きたという証拠になってくれる
むしろなめらかな海水をてらして
おわりなんてものはないというように

戦争がおこって
ぼくの街は廃墟で
死体がころがっていて
なにもかもがやさしさになりきれず
絶望絶望と指を指しながらなづけていき
夏と冬で街はかわってしまったと嘆き
ぼくとあなたはかわってしまったと嘆き
朝焼けを夕焼けとかんちがいしたヒグラシが
カナカナカナカナシイと街をもっと壊していく

終電も半年くらいまえにおわったのに
電車の非常停止ボタンをゆっくりと連打しながら
なにかをつぶやいているおじさん
くちもとにはウスバカゲロウがとまって夜を透かして揮発させてる
「ぼくはねあらゆる季節と関係をもったんだよ、だから」
「だから?」
「非情停止ボタン、非情停止ボタン」

mean meanと蝉がぼくになにか伝えようとしている
いきていく
いじわるな生を
できるだけ優雅に
できるだけただしく
せかいのほんとうの意味をさがして
まぶしい日差しに手をかかげながら
北極に行きたいね
なんていいながら


自由詩 mean Copyright コーリャ 2010-09-01 11:32:21
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