三軒目の鴉
あおば

                 100831





クリスタルの庭園に
カットグラスの彫像を納める
納入予定日は1ヶ月後
手慣れた職人さんは熱中症で入院中
そのお弟子は元気だがまだ見習いです
頼みとする彫刻家の先生は夏休みなのでご自分の製作に余念が無くて
山に籠もって出てこない
授業が始まって学生達が顔を合わせる頃にやってくる
それは3週間後のはずで
我が社の納期に間に合わない
渡りの職人さんが来る可能性は殆ど無い
ハローワークにも求人したが
本物の職人さんはやってこない
これから挑戦したいという見習い志望者ばかりです

注文の鴉は黒に紛うばかりの濃いブルー
羽根の優雅な波形が青白い炎のように煌めいて
飛び立つ時の気迫を偲ばせる
一羽は窓際に
二羽は天井に羽根を拡げさせ
三羽は庭で歩かせる
ポンという声で一斉に飛び立つさまをご覧なさい
それ以上の望みは無いと皆さまは声もなく丸く口を開けるばかりです
内部には最新型の移動センサーも忍ばせていて
定刻を過ぎお客様方がお帰りになると
庭園を横切って
ポプラの木の傍らの三軒目の控えの小屋に入り
腹を空かした椋鳥たちの面倒を見ているはずです






「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作。
タイトルは、FUJISUZUKOさん。



自由詩 三軒目の鴉 Copyright あおば 2010-08-31 00:36:58
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