AB

浜にあげておいた
古い舟は
帰ってくると沖に流されてしまっていた

海を眺めると
海面を文字が跳ねていた
潜ったかと思うと
再び跳ね上がる
いつまでも跳ね続ける
不完全な単語の
文字を呼ぶ声が
聞こえるような気がした

わたしはそばにあった舟を代用し
沖へ出た
潮の流れに任せ
転寝をしていると
もとの浜に戻っていた
舟から降り
浜辺に仰向けになり
戻っていた理由を考えていた
ふと目を遣ると
また舟はなくなっていた
わたしは、
ま、
とつぶやいていた


自由詩Copyright AB 2010-08-29 17:21:46
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