私 達
佐々木妖精

無痛でいられた頃
ただ手触りの良い毛布に包まっていた頃
こんな風になるとは予想もしていなかった

せめて(きみと水)を飲みたいとマグカップをくしゃくしゃ握りしめる
皺くちゃの破片が幾重にも折り重なり光を閉じ込める
色を決めるのが光だというのなら
俺色に染めてしまいたい
みんな俺色に染まればいいんだ
(思うのだけは自由だって学校で習った)
拳を解くと囚われた光が燦々にこぼれ

きみと水がどのように作用するか予想し頭痛薬を仕込む
楕円型の錠剤が胃壁を直撃し胃薬を恐る恐る落とす
着水音がペタペタとくたびれた靴のように馴染み

上目線でゲンコツ落としたくなるきみは平均的で一回り背が低くくしかし遠い場所にいて
手を伸ばし指先でようやく殴り
誰も痛がらないその殴り方を私達は撫でると名付けた
指先で撫でる≠きみを殴る時
同じ時空に異なる点が産まれた
私はきみへ近い極限の値点に置いてもらうため産まねばならないと思っている

頭痛薬とセット処方の胃薬について考える
これは頭痛薬+胃薬=無痛ということだ
きみ+僕=私達
私達―きみ=俺
私達―僕=あたし
俺+僕=私
算数の中にしかない関係を私達は可能性と名付けた
私には大は小を兼ねるのが分かる
だが中を兼ねるかどうか分からない
大は大以下を兼ねると明示しなったという事これは そう考えられる
僕はきみを兼ねる事が出来ないかもしれないだから
僕はきみの隣で せめてきみと(水)を飲みたい
俺色の水を きみ色の容器を眺めながら飲みたい
きみと私をかけた時あるいはその上で割った時どうなるか
その可能性を僕が口にすることは  だろう
(私はマグカップの内側が何色なのか知りたい)


自由詩 私 達 Copyright 佐々木妖精 2010-08-13 06:33:40
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