怪物
あおば


                  100803




物体化した組織の齟齬を見つめている
小さな罅が拡大してゆく速度を測る
気の短い魚が迂回路を避けて
小堰堤に挑戦する傍らを
よちよちとオオサンショウウオが通りすぎる
上流にたどり着かないと子孫が残せない
頭の中の知識を掻き混ぜながらカメラは回る
説明会のあとで投資の相談をする顔が
大型爬虫類の顔から類人猿の顔に変容して
申込書にサインをする頃には再び人類の顔に戻っている
物体化した組織を二次元の書類が綴じて電磁的記録化され
価格競争の外側にまだらな模様を描き彩色され
形態としての資質を問われないままに歩きだす


自由詩 怪物 Copyright あおば 2010-08-03 23:13:04
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