情景
ひち

かな、かな、かな、
音が溢れている、のに
耳が何も拾わない時に出会う
かな、かな、かな、
汗ばんで、湿った髪が頬に貼り付いている
だけれど氷水より冷めたものを浴びせられた気がする
かな、かな、かな、

蝉が転がって、君は拗ねてしまって
セイタカなんて燃やしちまえって
ガラス玉でできることは何だと思ってたのか
手が滑って、空を割ってしまうんじゃないかと
暑いから、日陰から出て来ちゃ駄目なんだと、言って

その髪が集めた熱が、指で梳こうとした途端に弾けてしまえばいいのに
かな、かな、かな、想っているのかな、今も、かな、かな、
かな、かな、かな、水に浸かった蒼い空が、泡立っている


自由詩 情景 Copyright ひち 2010-08-02 21:20:47
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