或る嘘つき女の生涯
あおば

               100718



地デジ対策が済んだら
地震対策は不要と
道行く人に語りかけた
どうしてと怪訝な顔をする人は少なくて
殆どの人は一舜顔をほころばせる
笑顔を見せるのはだいじな人にだけと決めている人も
嬉しいときはなかなか隠せないようで
チラリと本音を見せてしまう
明日は横町を抜けて隣町に行く
あさっては
自転車で県庁所在地の市に向かう
一週間後には
大陸に渡り
一ヶ月後には横断して
三ヶ月後には
再び我が家に戻っている
その頃には
新しい家が建っていて
庭には錦鯉の泳ぐ池が拡がって
通り行く人を楽しませる
一年後には
衆議院議員になっていて
二年後には閣僚で
三年後には早くも内閣総理大臣候補
五年後にはG8の先頭を切り
地震対策が国の礎と演説をする
帰国して憲法を改めて
大統領になり
100万円札の肖像となり
羨望の的となっているのを知りながら
托鉢しながら日暮れの道をゆっくり下る

下る途中で海が見えた
海ならばすべてが適う
たどり着いて
すべてが適い
無一物になって
合掌をする
儚いようで誰もが羨む
清貧の果てを楽しんでいるような
女化粧の山田の案山子もケータイ翳す七月









「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作を修正。タイトルは、 星子アヤノさん。



自由詩 或る嘘つき女の生涯 Copyright あおば 2010-07-18 11:56:41
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