ゆれる
雨音些末
君の車が
私の家に近づく
雨のドライブ
ルーフを叩く雨が
金属の音を響かせて
雨の激しさをしらせている
信号は赤
君が無言のまま咥える煙草
かちりと音がした後の
一息目のため息に
はっとしたように変わるシグナル
私は何か言い出そうとしたけれど
CDがかわって
にぎやかな曲が流れて
音符の波に
きっかけを失ってしまう
動き出した車の窓の外
濡れた窓ガラスに映る世界は
半透明に滲んで
まるで固まりかけたゼリーのようで
ゆれながら
なんとか崩れずにいるけれど
もう限界に近い
車の中なのに
心だけ外の激しい雨にうたれながら
しなってたわむ
ひとりと一人の空間
車を止めるたびに
君の口から出る言葉におびえながら
時間だけが歪んで過ぎる
もうすぐ終わるドライブ
家の前で
止めた車
笑顔を作ってひとこと
またね
その後の君の言葉に
世界は激しく
ゆれる
ゆれる
ゆれる