肌のよる
たちばなまこと

握りこぶしに八割の水分
寝具に横たわり
タンクトップも脱いでしまって
タオルケットに巻かれてしまえ
コットンが素はだかを優しく撫でる
身体感覚が昇るからうつぶせを楽しんで
ひとりではないような喜びを呼んで

猫のアーサナを
今日の痛みを絞り出すような
犬のアーサナを
今日の毒が背中ににじみ出るような

鏡の自分と向き合う
どうしたんだきみは
バランスを失いかけて
それは
絶え間なく血液が流れ肺は収縮し細胞が動いているからバランスのアーサナは難しいのです、と
先生
何よりも心臓が生きています
止められない

見守る人々にしか見えないものが
日常に散らばっている
そのままにできたらいいのに

汗がひくまで 心が静まるように
亡骸のアーサナを
深い夜
かえるの声を感じながら
冷えた肩先が
夏の兆しに鳴く


自由詩 肌のよる Copyright たちばなまこと 2010-06-30 07:49:27
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