ピチカカ反応
あおば

                  100622



反応が余計だと思うのだ
現象とか起源とかに束縛されて
ピチカカと今日も疲れている
一日歩き回ったあげく
上司から小言を食らい
同僚のさげすみの目を意識する
なにも知らない社外の人にも申し訳ないような気がして
頭を垂れる
まだ稲の穂が実る頃ではないのは百も承知だが
太陽は雲の上でさんさんと輝いている
海は青く
山も青く
郊外電車もスピードを増している頃だ
頭を上げると
アンケート用紙が渡される
意識調査にご協力と書いてある
このままでよいか
変化が必要か
分からない
興味がない
ばかげている
五枝選択を基本とするのは正しいかどうかを考える暇もなく
ボールペンを握らされ
真ん中のに興味がないに○を付ける
これで放免かと思ったら
裏もご覧下さいと促される
興味のない理由を詳しく書かねばならないようだ
叙述が未熟な呪術師は村から追放されるのだと
いつか読んだ文面が囁くので
急ぐのでこれで失礼と
アンケート用紙とボールペンを係員に渡し逃げるように立ち去る
横断歩道の信号が青で助かった
まだ完全に運から見放されては居ないようだ
大河のように車が流れる国道には梅雨の中休みを楽しむ家族のワンボックスカーの比率が多い
何パーセントが今を楽しんでいるのかと
アンケート用紙の設問に腕を捉えられた
どこにも人は居ないのに
紙の用紙だけが前を塞ぐように置いてある
意識すれば物は現れるのだと
少しだけえらくなった気がした
後ろを見たら
ベレー帽の青年がボールペンを渡してくれた
段ボールの中にはティシュがぎっしりと詰め込まれていて
まだ余裕があります
お友だちをたくさん連れてきてください
大歓迎しますと口を揃える
とりわけ今を楽しんで方のご意見は貴重ですので
政策決定の参考にさせていただきます
総選挙間近な街路では無駄な意見はどこにもないのですと
念を押された
解散総選挙でなければ
国民の真意は分からないと
無責任に書き込んで
二つ折りにして提出箱に投げ込んだ
ひったくるようにティシュをもらい国道を南下する
歩道脇には紫陽花が植わっていて
誰にでもトレンドカラーが楽しめるようになっていた
足を止める者がいないのは自明のことで
全員が後ろをふり向かないのを南下政策と言うのだと
独り合点したが
生憎メモする紙もなく
ツィットするだけで流れてしまう私の意識が誘うのか
大袈裟にクシャミをしたら
横を歩いていた人が(困った人ねと)ティシュペーパーを黙って渡してくれた
独りではなかったと少しだけ嬉しく
目から鱗と聞こえないように小声で囁いた
「過ぎ去ったものを追うよりも前を見ろ」の小言を思いだしまた不幸になるのは嫌だ
嫌だ!
嫌だ!!
嫌なんだ!!!
と大声を出した気で声にならないツィットを繰り返す







「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作


自由詩 ピチカカ反応 Copyright あおば 2010-06-22 02:31:13
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