翠雨
夏嶋 真子




 ぼくはまだいちご泥棒と眠りたい置き忘れたものばかりの園で


 衝動を積み上げていく指先に梶井のレモンわたしのオレンジ


 気だるさはインクに滲み水底の青い散文髪に絡まる


 紫陽花に傘をさし出す君の手に蝸牛ゆき軌跡が光る


 あお、みどり、むらさき、翡翠、リラ、群青、水色、そして虹の水無月


 ストロベリーチュパチャップス棒が抜けぽっかり胸に穴が空いたの


 夕暮れを飼い慣らせない青いの子猫は獅子の狩りをまねして


 静謐は音色を帯びて湖に波紋の廃墟月光ソナタ


 堆く積み上げた夜に星落ちて海辺の鴉の銀の嘴


 残月を描くレールのカーブから壊れはじめた夜の残響


 カーテンを開ければ朝の光さす輪廻の糸で編まれた繭に





短歌 翠雨 Copyright 夏嶋 真子 2010-06-15 18:09:47縦
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