ピタリと閉まる
あおば


                   100608



カビンにバラを活ける
埋められた青春が泣きだしたのか
一斉に花を咲かせたベルばらの日々が
昨日のように感じられるのか
春猫が仔犬のようにじゃれついて
跳躍を開始する
麻の実を植えるのが忍者ならば
バラを飛び越すのが春猫
カバンにバラに詰め込んだ麻の実を
公園のベンチで開き
近寄ってきた椋鳥に見せびらかして
ひとすくい草の根の近くにばらまいた
飛び降りる雀の足音に
忍び寄る春猫の無音の足音
芽が生える前に開始された跳躍が
忍ぶ者の差し金に触れて
耳障りな音を立て
カバンの蓋がピタリと閉まる



自由詩 ピタリと閉まる Copyright あおば 2010-06-08 21:59:50
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