帯を締める日
でこちゃん

知ればきっと赦せるのだと信じていて
心理学の本を何冊も読んで
そこに載っていたのは私だった
ほんとうは
とうさんを探していたのだけれど

とうさんが載っている本が見つけられなくて
さみしさは臨界点を超えてしまっていた
こぼれたものは幽霊の足跡の雫
もう永遠に赦せることなどないのかと思った

少し諦めた頃
身の丈に合わない勉強をはじめて
そこで出会った本に
とうさんの断片が散らばっていた

とうさんは高度経済成長の波に乗っていたけれど
途中で波から 自分からさえも剥離しかけて
皮一枚で孤島に植わる巨木で息をしながら
宙ぶらりんになっていたのだった

そんなことはほんとうは
家族の誰もが知っていたはずなのに
地中の穴を掘ることに一生懸命で
地上に出れば盲目の土竜だった

赦されないのは土竜たちではないか
でも
誰が赦すも赦されないもないね
とうさん


私ははじめて着物の袖に腕を通してみた
帯も自分で締めてみる

気持ちがギュっと締まって
背筋がピンとした

褒められたことなどないけれど
今の私は 褒められたいな
とうさん



 

 


自由詩 帯を締める日 Copyright でこちゃん 2010-06-06 14:35:27縦
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