蘇生
within

水たまりを跨いだら、一国の王になっていた。

捨て猫の声が聞こえてくる。何故、捨てられた猫であるとわかるかというと、猫の言葉がわかるわけではなく、捨てられた猫の啼き声は、激しく依頼してくるからである。

世界の厳しさに耐えられずに、ひたすら訴えかけてくる。手を差し伸べれば生き残るだろう。しかしまだか細い体は、心臓と肺で精一杯だ。

自分より小さな無抵抗な存在を殺す心は、持ってないようだ。それだけ満たされているから、君を食べたりはしないよ。

乾いた喉に入ってくる水が枯れた粘膜を深海へ還す。今日も始まる。鳥のさえずりが聞こえる。夕暮れかと思えば、本当は朝だ。まるで戦争だ。いや戦後だ。焼け野原。焦げた肉の臭いに思わず息を止める。

砕けよ石。粉々になって砕け散るのだ。小さな石礫がこの町を潰す。有限でも無限でもどちらでもいい。瞬間にかい間みることができるのは、ひとつの物質の新たな姿。時間の微分。


自由詩 蘇生 Copyright within 2010-05-29 06:22:37縦
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